恋する時間を私に下さい
時計の針よりも遅い速度で、点滴は落ちてた。

真っ白いシーツの中に眠る姿は、まるで死人のように落ち着いてる。

室内には、規則正しい音が流れてた。

家族でもない俺が付き添うことを、医師も看護師も拒んだ。
けれど、甲高い声の妹が、一緒になって頭を下げてくれた。

「お願いします!お姉ちゃんはそれを一番望んでると思います!」

酷い言葉で傷つけたのに、少しも責めずに力を貸してくれた。


「…ありがとう……」

お礼を言うと、笑い返した。

「私はただ…お姉ちゃんの代わりを言っただけです…」

姉の居場所奪って、申し訳なかった…と話してた。

「カップラーメンや弁当なんか食べさせて…すみませんでした…」

料理はニガテで…と謝られた。


「お姉ちゃんみたいに家庭的な人が羨ましい…」


顔だけで集まるオトコには興味がないんだ…と言ってた。
俺がアイツと間違えて抱きついたのを知って、関心を持ったそうだ。

「声はよく似てると言われてたけど、間違えられることはなかったから。よほど焦ってたんだろうな〜と思って…」

姉を好きになったんだから、見る目がある…と褒められた。



「とんでもない…俺は全く、何も見えてなかったよ…」


あの時……
叫び声を聞いて、警官が走り込んできた。
未遂とは言え、包丁を振り下ろしたコウヤは、その場で警察に捕まった。

危険な感じがする…と、警察に巡回を頼んでたのはスグルだった。

「ヤバい雰囲気に気づいてなかったのかよ⁉︎ 」

呆れ顏で言われた。
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