恋する時間を私に下さい
ハッとするような顔をした。
その顔を見ながら、俺は今回のような事件を、二度と起こしたくない…と思った。


「あんな恐ろしい思いをするのは懲り懲りだ。同じ思いを味わうくらいなら、二度と漫画なんか描かなくてもいい。子供の頃の夢だろうが何だろうが簡単に擲つ。俺にとって大事なのは、漫画を描くことじゃねぇ!リリィ……お前が生きてることなんだ!!」


手の中で、人が死にゆく瞬間を目の当たりにした。
血がダラダラと流れて、滴り落ちる。
顔色がどんどん真っ白になって、声をかけても、名前を叫んでも目を開けない。

体温が急激に下がっていくのが分かった。
うな垂れた手指に力が入ってなくて、もう二度と、名前も呼んでも振り向かない……と思った。


「もう二度と、あんなお前の姿は見たくない…!生きててくれるなら、何に替えてでもお前を守る…!だから、もう…漫画は描かなくていいんだ…!!」



私のことを思って、言ってくれてるのは分かる。
それは嬉しいし、ホントに有難い。


でも…私は、あの礼生さんの部屋で『恋する時間』を送るのが好きだった。

彼が食べたがってるものを作りながら、いろいろと考えてる時間が好きだった。


…それを取り上げないで欲しい。
いつまでも、私に、『恋する時間』を与えて欲しい。


気持ちが通ったからって、無くさないで……

あの場所で…

私はずっと……

あなたに……

恋してたい……!


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