恋する時間を私に下さい
「礼生さん……」

力無く彼を呼んだ。
支えてる手に力を入れて、彼が顔を覗かせる。
その顔を見ながら、心から願いを告げた…。


「私に…考える時間を下さい…。何が一番大切で…大事なのか…もう一度ゆっくり…考えさせて欲しい……」


この体調では、まともな答えは出てこない。
体の傷を治しながら、礼生さんが負った、心の傷の癒し方も考えるから……


「……しばらくここへは来ないで………距離を……置きたい……」


父にしてくれた申し出は嬉しかった。
あれが思いつきやその場しのぎで言った言葉じゃないとは思ってる。

……でも、実現するには、まだ納得できないものが幾つもあるから……



「……時間を……下さい……」


一人一人になって、考えたい。

私はあなたのことを
あなたは私のことを

どうやったら、幸せにできるのか。
どうすれば、無理をせずにいられるのか…。



「…一生懸命…考えるから…」



……すがるような瞳で見つめられた。

片時だって離れていたくない。
やっと目覚めたコイツを守って、ずっと側にいると決めたのに。



「お願い…」


願いを乞う彼女に、胸がぐっと押さえ込まれる。
みぞおちの辺りが苦しい。
妙な動機がして、変な気持ちになる。

胸苦しさに襲われる。
その苦しさを感じながらも、それでもこの先、共に暮らしていく為に必要な時間だと言うなら……



「………分かった……リリィの答えが出るまで……ここには来ない……」

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