恋する時間を私に下さい
でも、また描き始めるから。
今度こそ、本当に魂を込めた作品を描くから。

君に…
それから…読んでくれる人に…

感謝と愛と真心を込めて贈るから……。


待っていて下さい。
生まれ変わった俺の作品が出来上がり、貴女の目に届く日を。

そして、またお便り下さい。
貴女の名前を忘れずに覚えておきます。


友坂百合さん……

本当に、ありがとう………


追伸; 直接お目にかかれる日が来たら、覚悟しといて下さい。
俺は、これから毎晩、貴女の夢を見続けます……。


オガタ レイ






ーーーーーぎゅっと手紙を握りしめて、お姉ちゃんは泣いた。
声もかけれないくらい泣く姿を、私は初めて見た気がする。


レイさんは、今朝早くにドアチャイムを鳴らして、私にこの手紙を託した。

「ホントは俺が届けたいんだけど…」

残念そうな顔をして。



「…いいコト書いてあったの?」

泣きやみつつあるお姉ちゃんに聞いてみた。
お姉ちゃんは頷いて、嬉しそうに微笑んだ。


二人にしか見えない時間が、そこに流れてるような気がした。
その大切な時間のやり取りに、少しだけ関われたことが嬉しかった。


窓の外では、真っ直ぐな飛行機雲が伸びている。
青空がどこまでも高く広がってるように、お姉ちゃんとレイさんの気持ちも、どこか晴れ晴れとしてるように思えたーーー。

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