恋する時間を私に下さい
息を切らしながら裏口へと回った。
ドアノブを握っても、やはり動くことはなくて、どこへ行ってしまったかも分からなくなった礼生さんの行方を、一人呆然としたまま考え込んでた。


今更ながら、どうして電話番号くらい聞いてなかったんだろう…と後悔した。
部屋が隣で、職場も一緒だったから、聞く必要ないと思ってた。

取り出したケータイを握って息をつきました。
ハァー…と深くため息をついてしゃがみ込んだ時、急に思い出したことがあって、電話をかけた。


コール音が鳴り響いても、相手はなかなか出てくれませんでした。
最悪の場合、もう一人にかければ何か分かるだろう…と考え直した時…




「……もしもし…」

寝ぼけたような声が聞こえ、ハッとして電話を握りしめました。

「トドロキさん⁉︎ リリィです!」

大きな声を静めた。
あれこれと聞きたいのを我慢して、一つに的を絞った。

「礼生さんの居場所を教えて下さい!」

イキナリな一言に、し…んとなりました。

ごそごそ…と何かを触る音がして、答えが返ってきた。

「…今どこ⁉︎ 」

くぐもった声に違和感を感じながら、『OーGATA図書館』の裏だと言うと、トドロキさんは側にある階段を上がってくるように…と言いました。


「いい⁉︎ …最上階だよ」

その言葉を最後に電話は切れた。
裏口から続く階段を見つめ、立ち上がりました。

このビルの所有者は年配の人だと、生前、頼三さんが話してくれた。
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