恋する時間を私に下さい
「あの…つかぬ事を聞きますけど……礼生さんがオーナーってことは、その前は誰が…」

聞き返した私の質問に、礼生さんはイラついた口調で答えた。

「…ジイさんに決まってるだろ⁉︎ …あのヤロ、俺に残した財産はいい物だなんて言いやがって。こんな年季の入ったビル、メンテだけで相当金使うんだぜ⁉︎ 」

漫画で稼いだ金返せ…とボヤいてる。
まさか、頼三さんが言ってた知り合いが、自分のことだなんて思わなかった……。

「…呆れた…」

知らないにも程があり過ぎる。
考えてみたらこんな駅前の一等地、タダで貸してくれる人なんて、いる筈がありません。

「…そうよね……」

合点がいって、急に可笑しくなりました。
食事するのも忘れて、クスクス笑い続ける私を、礼生さんもアシさん達も不思議そうに眺めてた。

……その後、夕飯の買い物をしにスーパーへ行き、ルナに電話をかけると、いきなり「礼生さんと同棲するんでしょ⁉︎」と言われた。

ビックリしてスグに否定したけど、その日の帰り、礼生さんに呼び出されて……



「…これ、預けとく……」

黒い鉄製の鍵を手渡されました。

「…いつでも来ていいから。さっきの蔵の図書館で、好きなだけ本も読んでいい…」


ーー部屋の合鍵なんて、もらった事ありません。
てっきり、家事手伝いしやすいように…という意味かと思ってたんだけど……



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