恋する時間を私に下さい
肩を縮こませる彼の元へ寄ってくる男性。
腰を抱き、まるで恋人同士のように寄り添って歩き出す。


……スグルさんの言ってた言葉が頭をかすめました。
信じたくない気持ちをかき消すようなコウヤさんの笑顔を見て、胸がきゅっと痛くなった……。



……何かに…頼りたいと思う気持ちは誰にでもあって…コウヤさんの場合は、それがたまたま男性だったというだけで……

だから、今、目の前にある姿を哀れてはいけないと思うけど……


(幸せになって欲しい……)


……そう思いました。

礼生さんが悲しむ顔は、誰よりも一番、コウヤさんが見たくなかったはず。
だから…どうか、彼自身が幸せになって、礼生さんを安心させて欲しい……。


涙ぐむ瞳の中に消えてゆく二人……

(どうか、もう二度と……同じ過ちを繰り返さないで……)


見送った後、駅に向かって駆け出した。

怖かった気持ちは何処かへ行ってしまった。
その代わり、無性に礼生さんに会いたくなった。

(第二『OーGATA図書館』の本なんかよりも、礼生さんの顔を見て安心したい…)

そう考えて、走っていたーーー
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