恋する時間を私に下さい
「…うるせぇ!お前ら、とっとと帰れ!!」

キィーン…と、耳に響くくらいの大音量。
この部屋が角部屋でなかったら、絶対に隣からクレームがくるくらいの大きさです。


「……チッ!緒方さんは冷てぇな…」

一人がよろり…と立ち上がりました。

「ホントホント。せっかく修羅場手伝ってやっても、いつもこうだもんな…」

ガチャガチャ…と沢山のキーホルダーを付けた人が言います。

「でもまた、手伝いに来るんだよな、俺たち…」

鼻筋の通った、イケメンの子が笑いました。

「何せ、ガタさんのファンだからさ…」

「そうそう!」

一番年上そうな二人が、肩を抱き合いながら立ち上がります。
緒方さんは彼らの言葉を殆ど聞いてないみたいに、返事も何も返しません。

そして、帰る姿を黙って見つめてる。





「……お前は?」

全員が揃って部屋を出て行った後、緒方さんの視線がこっちを向きました。

「えっ…⁉︎ 」

きょとん…として聞き返したら……


「…お前は…帰んねーの⁉︎ …ここに泊まる気か⁉︎ 」

にじり寄る彼の姿にゾッとして……


「か、帰りますともっ!!も、勿論!!」

…ってゆーか、そもそもここへ引っ張り込んだの、あなたなんですけどぉぉ……!


そんな言葉を言っても仕方ありません。
職場の上司と二人きりでいるなんて、とんでもない事です…

「し…失礼しますっ!!」

ギクシャクと立ち上がって、玄関に走る。
脱ぎ捨てた靴を履きなおして…
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