恋する時間を私に下さい
『めし』…という言葉に、『屍』達が反応しました。

ピクッと動く瞬間を目にした…。
面白いことに、全員ピクつく場所が違ってました。

ある者は指先がピクリと動き、ある者は頭がピクつき。
体全体がピクピク…と動いた者がいるかと思えば、足先だけが動く者がいる…。

でも、次の瞬間、全員が起き上がり…


「めし…!」
「めしだぁ…!」
「オレのめしぃぃ…!」

ガサガサ…とテーブルと集まる姿は、異様でした。

皆、一様に汚れています。
髪には紙切れ、服には絵の具をつけ、髭は伸び放題、頭はボサボサ。

あっけに取られたまま、部屋の隅にへたり込んでしまいました。
六人は無言のまま、とにかく私の作った物を食べ続けます。


『餓死寸前…』

そんな感じにも見えました。


そして、わずか五分もしないうちに…


「もう、ねぇ…」


悲しそうな声が聞こえてきました。
まさか…と思って近づいてみたら…

皿の中は空っぽ。
パスタもオニギリも何も残っていません。


「…くっそー!もっと味わって食えば良かった!」
「お前、オレより多く食ってたくせに、ふざけた事言うな!」
「俺なんか、お前らよりも更に少なかったぞ!」

『屍』達に生気が戻ってきたと思ったら、今度は餓鬼になったみたいです。
食べ終わった後の物の取り合いなんか、聞いたこともありませんから。

茫然…と見つめる私の目に映ったのは、箸を置く緒方さんの姿。
僧侶のように手を合わせ、そして、こう叫びました。
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