恋愛ケータイ小説倶楽部
「それ買いに来たの?」


先生の声に顔をあげると、先生は私の手元を指差した。


「夏目漱石の『こころ』」


「あ、はい。読んでみようかと」


「ようやく国語力を養う気になったか」


そう言って先生はまたいたずらっ子のような笑顔を見せた。


「小説は順調?」


「うゔ…まだです」


実は先生と……古賀先生のことが気になって、今回の宿題分はまだ手をつけていなかった。


「ま、次、楽しみにしてるから。あとそれも読んだら感想教えてな」


「は、はい」


私がそう返事をすると、先生は目を細めて微笑んだ。


好きなものを話すときと同じようなあの優しい笑顔。


私の一番好きな先生の表情だ。


胸の奥がキュンと疼くのと同時になんだかわからないけど、痛くなる。


「椎名」

< 150 / 217 >

この作品をシェア

pagetop