超能力者も恋をする
パソコンの画面を見て必要な書類を再び確認しながら、手だけキャビネットに向けてもう一度手を向けた。
すっかり念力を使いこなしているすみれ位になると、対象の物体を見なくてもその物を動かす事が出来るようになる。少々お行儀は悪いかもしれないけど…。

片手でキーボードを打ちながら手を上げて待っているとすぐにファイルが飛んできた。
すみれの手に収まる直前、

『ガチャっ』
扉が開く音がした。驚いて扉の方をみるとそこには先輩の加藤さんが立っていた。
加藤先輩と目がバッチリ合った瞬間、
『パシッ』

すみれの手に静かにファイルが収まった。

「………」

お互い目が合ったまま固まっている。静かなフロアに沈黙の時が流れる。
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