超能力者も恋をする
「本当?大事にしてた時計だったのに。店の中で失くしたの?」
「帰ってから無い事に気づいたから、多分店の中だと思うんだけどね…。まぁいつか出てくるかもしれないけど。」
マスターは今は何も付けられていない左手首を摩りながら、淋しげに呟いた。
お客が来たのでマスターはオーダーを取りに行った。

マスターの淋しげな背中を見送ってから、先輩がすみれに向き直ってじっと見て来て声を潜めて言った。

「なぁ…、間宮の力で見つける事は出来ないか?」

先輩の話によると、失くした時計はマスターの亡くなった奥さんとのペアの時計で、ずっと大事に大事にしていた物だそうだ。
カウンターを見ると奥さんとマスターの写真が飾ってあった。写真の2人は寄り添って微笑んでいて、腕にはお揃いの時計がされていた。
絵に描いたような素敵な夫婦だ。

「うーん…、探し物ってやった事無いんだけどマスターの為に見つけてあげたいから、やってみる。」
「そうこなくっちゃ!」
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