メシトモ!
「ここ、どこだと思ってるの。自分の職場でしょ」

「うん。そうだね。よし、帰ろう」

「えっ」

 佐々木さんは私からスカート部分を取り、コートを着せた。それからオフィスの戸締まりをし、私の腕を引っ張りながらオフィスを出た。

 そのまま佐々木さんのマンションに泊まることになった。もう、あれやこれやの展開についていけない。朝方、幸せそうな寝顔の佐々木さんを残して、ベッドから這い出た。

 私の中では佐々木さんは穏やかな人だと思っていた。人間以外の生き物で例えるならウグイスみたいな鳥だ。それは勘違いだった。正しくは狼かライオンだ。時差ボケはないのだろうか。夜でもなんであんなに元気なんだ。

 朝だというのに魂が抜けている私は、珍しくタクシーで実家に帰った。

 家に入りキッチンにいる涼太を見て、しまったと思った。なんでアパートに帰らなかったんだろう。そこまで頭が回らなかった。

 私の顔をじっと見て「ふーん」と涼太は言った。

 それを無視して部屋に入ろうとしたとき、バッグからマナー音が聞こえていた。スマホを見ると佐々木さんからの電話だった。急いで部屋に入り、画面をタップした。
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