メシトモ!
 舞台を眺めつつ、お客様の方へ意識を向けていると、肩を軽く叩かれた。

「杉山さん、弟さんがモデルの代役務めるんでしょ? ドリンクのサービスも終わっているし、このあと有料でドリンクを頼む人も少ないと思うから、もう少し見やすい所に移動していいわよ」

 山崎さんは耳元で、そう囁いた。

「ですが、私はヘルプで来ていますし」

「いいから。手が必要になったら、すぐに声を掛けるから」

 山崎さんの強い押しに負けて、私はお客様から目の付かないステージ横にあるパーテーションの陰から眺めた。

 今年、流行のデザインが三パターン続き、そして装飾の少ないシンプルなドレスを着たモデルさんが出てきた。その隣に居たのが白いタキシードを着た涼太だった。

 ワックスで随分おしゃれな髪形になっていた。背筋を伸ばして歩くように言われたのだろう。糸で釣られているようだった。顔はぎりぎり笑顔って感じだった。背が高いおかげで、女性のモデルさんとのバランスはよかった。

 涼太もあと十年くらいしたら、あんな感じで結婚式挙げるんだな。私はそのとき泣くのだろうか。そのときになってみないとわからないけれど、今は軽く笑いたい。うちの弟には白のタキシードは似合わない。涼太が結婚する時には、絶対にそれを教えてあげよう。

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