メシトモ!
 のろのろと立ち上がり、カレーの前に座った。

「いただきます」と言いながら、涼太にお辞儀をすると「召し上がれ」と言う言葉が降ってくる。

 野菜がごろごろと入っているカレーは杉山家の味だ。お母さんが死んで、涼太が作ったカレーを食べて泣きそうになったのを今でも覚えている。実家で涼太の作ったカレーを食べると、必ずそのことを思い出す。

「涼太、お父さんは?」

「今日は飲み会だって」

「そう。ねえ、大学卒業したら一人暮らしするって、本気で言ってるの?」

 今年の四月で大学三年になった涼太は、就職関係の相談を私にしたとき一人暮らしのことも相談してきた。

 私も就職同時に一人暮らしを始めたから驚きはしなかった。こんな家事のできない私ですら、なんとかやっていけるのだから、涼太なら全く問題ないと思う。問題はお父さんだ。

 お父さんは私と同じで不器用で家事ができない。つまり私がお父さんの不器用遺伝子を受け継いでしまった。逆に、涼太はお母さんの器用遺伝子を受け継いでいる。私もそっちの遺伝子がほしかったと、年齢を重ねれば重ねるほど思う。

 私としては、お父さんが心配でたまらないのだ。

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