男装騎士~それから~
「本当に来てくださったんですね!」
「うん。約束したからね」
「ありがとうございます」
席に案内され、メニューを手渡される間そんな会話を交わした。
ぎこちない自分が情けなくて、視線をメニューに落とす。
手書きで書かれた可愛らしいその字。
きっと、彼女のものだろう。
そう思うと、その字さえも愛おしく思った。
なに、考えてるんだろう。
「おすすめは、シフォンケーキです」
「え?」
「それだけは、私が作ってるんです」
顔をあげ視線を交わらせると、エリサさんはにっこりとほほ笑んだ。
全てを浚われてしまいそうな。
そんな、感覚に僕は頭を振った。
「どうしました?」
心配そうな彼女に笑って見せて。
「じゃあ、シフォンケーキを」
そう言ってメニューを返す。