あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「そうか。ゆっくりした夜が過ごせるね。」

郁也の甘い声が私の耳元で囁く。

「じゃあ、シャワー浴びてくるよ。」

郁也はやっと立ち上がった。

私は少し寂しくて、ソファのクッションを抱え込んだ。

でもすごかったよね、今日のパーティ…。

雄二が言う通り、私は緊張して、周りの様子なんて全く目に入らなかった。

何も分からない小さな子供があっけに取られながら、大人に手を引かれている…そんな感じに見えたのではないだろうか。

そこで立ち止った郁也が私に囁いた。

「萌香、見てごらん。みんなが俺の専務就任と婚約を祝ってくれている。ちゃんとこの様子を心に刻んでおいて。秘書としても、婚約者としても。」

そう言われて私は我に返ったのだ。

郁也を見上げると、にこりと笑いかけられた。

私も何とか微笑んだ。

するとその姿を見ていた来場客がざわっとした。

< 392 / 400 >

この作品をシェア

pagetop