ラヴィアン王国物語
★★☆

 空に向かって聳え立つ第一宮殿には、海の側にあるヴィーリビアの神殿と同じ模様のオベリスクが、天を衝く如く聳えていた。
 アイラが眼を凝らすと、青い光は地下に続き、水の波動を受け続けているオベリスクの下に、小さな地下階段。地下井戸だろうか。どちらにせよ、進む以外にない。アイラは迷わず向いた。


「まず、民から取り戻せそう。このオベリスクよ。水に縁がある証拠だわ」


「やはり行くんですね……あ」


 ふいっと大きな影が背中に覆い被さったような気配がしたが、気のせいだろうとアイラはこきっと腕を鳴らして、オベリスクの地下階段を慎重に降り始めた。

 地下を進むごとヴィーリビアを思わせる彫刻。世界は繋がってるのだと示すように。
 アイラは眠気で朦朧としつつも、以前何とか読破した巫女歴史の書物を思い出した。

「精霊世界のはじまり」。

 巫女が学ぶべき、精霊歴史学の一項である。

 世界は一つだった。

 神が大地を割った。割った中から、光・水・土・火・風が生み出され、最後に闇が出て来た

 大地は特色を持つ国々に別れた。

 しばらくは穏やかに過ごしていた。しかし、精霊は光と闇にいつしか分かれた。

 人が精霊を利用し始め、大きな戦いの末、今の世界になった。

 怒った精霊は人間が生きて行けない自然の力に平伏すような、『災害』を生み出した。

 自然の恐怖を、人々に植え付けたのである。

 だから精霊と人間はどこか相容れない。今も『災害』を起こそうとする精霊がいて、いつでも世界を取り戻す準備がある。悪事が起こるも、その影響。精霊を敬え——。


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