ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
「…追いかけることが可能です。魔力を辿って。」
「魔力を辿って、とはどういうことかな?」
「ジアを追いかけるように、使い魔に頼みました。魔力は消えていないです。ウィンという名です。ウィンの動きが止まりました。ウィンはそのまま動かずにいてくれると思います。あと、緊急事態だからシュリ様とシャリアスさんを呼んで、迎えに行こうと思っています。」
「仲間の魔法使いだったね。」
「はい。」

 国王の目を真っ直ぐに見据えて、キースは肯定した。

「…あんなに重傷を負っている中で、そこまで落ち着いた対応ができるなんて…。」
「それでも、ジアが誘拐されることになったのは間違いなく私のせいです。」
「そんなこと…!」
「…躊躇しました。魔法を使うことを。使っていても龍に勝てるかはわかりませんでしたが、それでも人間でいるよりは勝機があったと思います。それでも…保身を優先しました。」

 白状するしかない。国王にも、女王にも。二人の信頼が欲しいと思うなら尚更。

「…それは今の段階で仕方がないこと…でしょう?その中でも、最善を尽くした。ジアのために。そうでしょう、キースくん?」

 真っ直ぐな瞳がキースを見つめた。

「絶対に、ジアを連れて帰ります。それしか、今の私にできることはありません。このままじゃ、ジアに向き合えない。」
「…まったく、君たちは同じことを同じ方向を見て言うんだね。」
「え…?」

 目の前の国王は優しく微笑みながら言葉を続けた。

「ジアは、正々堂々と君の隣に立つことのできる自分になりたいと言っていた。君に引け目を感じているようだったよ。君に届かない、と。」
「あら、じゃあ本当に同じね。キースくんと。」

 
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