ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
― ― ― ― ― 

「シラっ!」
「ダメですよ、ジア様。大きな声を出しては。」
「そうだった!」
「横になったまま、お聞きください。」
「うん。」

 ジアは掛け布団をかけ直した。

「シャリアス様、シュリ様、キース様、皆元気に過ごしておられました。麻痺薬の効果はもうすでに切れており、お二人とも動くことも会話をすることもできておりました。」
「キースの火傷は?」
「完治した、とのことです。」
「…よかった…。」
「あちらでは、ジア様を助ける方法を考えております。」
「あ、あたしは何かすることは…。」
「ジア様は、黙って待っていろ、とのことでした。シュリ様より、託です。」
「…シュリっぽい~!」
「それと、もう一つ。」

 シラはグロウの光をそっとジアに渡す。

「グロウ!キースの?」
「はい。これを渡してほしいと言われましたので、お渡ししますね。」

 グロウの灯りがジアの手に触れる。すると、キースの声が聞こえてくる。

「え…?」
『ジア、身体は大丈夫?来るのが遅くなってごめんね。』

 ジアの瞳に涙が込み上げる。ずっと聞きたくて、不安で、心配だった人の声が、すぐそこにある。

『もう少しだけ、待っていてほしい。絶対に迎えに行くから。』

 瞬きをすると、自然に涙が両目から零れ落ちた。そして、灯りはゆっくり消えていく。

「ジア様…!?」
「ごめんね…なんでもないの…なんでも…。」
「…シュリ様がおっしゃっていた意味がよくわかりました。」
「シュリが?」
「…ジア様。」
「なに?」
「…いいんですよ、ジア様。ジア様は、王女様ですがその前に、ちゃんと一人の女の子なんです。全部一人で背負うなんて…しなくていいんですよ。想いを一人で叶えなくてはならない…なんてことはないです。」

 シラの言葉が優しく身体にしみこんでいく。涙が止まらない。シラの手がジアの頭を優しく撫でた。
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