ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
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「婚礼の儀は16時からとのことだ。」
「15時には姫君とランは控室に入る。場所は広間の裏だ。」
「ここにキースが侵入する。ランがいてもいなくても、奪って逃げる。」
「一般参列者に入るおれとミアはどーすんだよ。」
「私たちがお前たちを連れて帰るに決まっているだろう。」

 夜のうちにミアとクロハをキースたちがいる部屋へと運び、全員が合流した。クロハとミアはランにどうにか話を通して出席できるようになったらしい。ミアがジアの親族であるということで寛大な措置が取られたようだ。

「キース、覚悟は決まったか?」
「…もちろん、って言いたかったですけど、…何をするか、わかりません。」
「どういう意味だ?」

 キースは少し俯いて言葉を続けた。

「龍の出方、ジアのこと…目に飛び込んできたものによって、何ができるか、何をすべきか…変わってくるなって思って。」
「まぁ、そうだな。お前を見て一瞬で龍に変わるかもしれん。」
「はい。」
「そのために、私達がいるのだ。」
「そうだよ、キース。万が一、怪我人が出た場合はクロハとミアに任せられるし。」
「民と自然、建造物は守ってやる。お前は存分に暴れていい。」
「暴れるって…そんなことはしませんよ。」
「いいんだよ、暴れて。」
「え?」

 シャリアスが軽くキースの背を叩く。

「そのくらいしないと、肝心のランくんの心を折るってところができない。諦めてもらわなくちゃならないでしょ?ジアちゃんのこと。」
「……。」
「それに、キースには敵わないって思わせるのも大事なことだしね。」

 ばっちり決まるウインクが少しうらめしい。

「ではみなの者、各々しっかりと役割をこなすように。」
「ああ。」
「任せてほしい。」
「キースのために一肌脱ぐよ。」
「キース様、お姉様のことを…お願いします。」
「くれぐれも怪我すんなよー。」
「はい。」
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