ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
― ― ― ― ― 

「…なぁ、まさかあいつらさぁ。」
「クロハくん、覗きは野暮じゃない?」
「ミアはどうした?」
「ミアは休んでる。久しぶりのオーバーワークで眠ってるよ。」
「ついてなくていいのか。」
「おれの荷物を返しにこないジアが悪い。」
「…と言いつつ、ジアちゃんの身が心配なところがクロハくんだよね~!」
「うるせぇ!」

 クロハとシュリとシャリアスはジアの部屋まで来ていた。まさかと思う気持ちと、そんなことをするわけがないと思う気持ちの半々である。
 窓からそっと覗くと、二人の姿が見当たらない。

「あいつまさか…!」
「いやーないでしょ。だってキースだよ?」
「まったく…これだから男はバカだ。」

 クロハがドアを開け、中に入るとベッドですやすやと眠る二人が目に入った。向かい合い、お互いをぎゅっと抱きしめたまま眠っている。キースの怪我もほぼ治っているようだった。

「…なんつーか、既視感がある。この姿。」
「だから言ったじゃん。キースはさぁ、その線は越えないよ。」
「まぁ、シャリアスに一票だな。お前だって越えられないだろう?」
「…うっ…。」
「つまりはな、お前たちはちゃんとわかっているんだよ。二人が王族である、と。だからこそ模索し、目指す。どのように在るべきか。その傍らにいるために。」
「でもさ、結果この顔が見れたんなら…本当に良し、って感じだよね。」
「そうだな。…幸せな顔だ、二人とも。安心して眠るために、互いが必要なのだ。そんなこと、わかりきっていたのに、随分と遠回りしたものだ。」

 シュリはため息を零した。

「でも、多分その遠回りはキースのために必要だったんだよ。ジアちゃんの傍で、ものを見て考えていくために感情は必要だ。それを養うためには、この遠回りは無意味じゃない。」
「そうだな。」
「…荷物だけ持って戻ろ…。心配して損した。」

 クロハの呟きに、シャリアスとシュリは顔を見合わせて笑った。
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