ハルアトスの姫君ー龍の王と六人の獣ー
「ところでジアちゃんたちは何してたの、今まで。」
「あ、えっと…とりあえず最後に見ておこうと思って。アスピリオ。ね、キース。」
「うん。素敵な場所でした。みんな、優しかったし。」
「そりゃキースに優しくなるよね…。なんていったって、ランを救ったヒーローなんだから。」
「それは…俺の力じゃないから…。」
「まーだそんなこと言っとんのか、お前は。」
「ら…ラン!?」

 上半身は包帯を巻いたままで、ランが現れる。ランの姿に、アスピリオの民たちが沸いた。

「ラン様!」
「お怪我の具合は…!」
「まだ龍にはなれそうにないけどな、もう大丈夫や。」
「よかった…。」
「無理しないでください!」
「おう、ありがとな!」

 ランが大きく手を振ると、みんなの顔が笑顔に変わっていく。ジアはほっと胸をなでおろした。

「…んで、ちょっと顔かしぃや、キース。話がある。」
「うん。俺も言っておかなくちゃならないことがある。」
「キース…。」

 ジアはキースのマントの裾を引いた。その手をやんわりと包んで、キースは口を開く。

「大丈夫。ジアは宴を楽しんで。」
「なんやーほんま見せつけてくれるわ。姫さん、これは男同士の話なんやて。邪魔せんどいてーや。行こか。」

 ランの背中に、キースは従った。ここを去る前に、ランとはしっかり話をしなくてはならない。
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