遠すぎる君
年始はお母さんの実家にあたるおばあちゃん家で過ごした。
岸田先輩は受験の追い込みが忙しく、
メールか電話だけ。

それでも私は満たされていた。

先輩は言葉だけでも充分すぎるくらいで、
私を不安にさせたり寂しくさせたりしなかった。
それどころか毎日心が温まった。

なんて穏やかな恋愛なんだろう。

胸が締め付けられるような気持ちはないけれど、
一歩一歩進めてる気がして、自分が成長できる……そんな恋。

だから先輩が見事合格を果たしてゆっくり会えたとき、

「俺にご褒美ちょうだい。」

と、イタズラ混じりに言ったときも

「いいですよ」と素直に応えた。

先輩が何を望んでいるのかは何となくわかっていた。

「しおりがほしいんだけど……」

岸田先輩は私を大事にしてくれる。
そう確信があった。
だから

「はい……」

応えたい、そう思った。
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