遠すぎる君
試合の後、学校に戻りミーティングと軽く練習を済ませた俺は監督に呼ばれた。
「お前を次の地方大会からスターティングメンバーとして使う。」
「は、はいっ!」
「ダメだと思ったらすぐ外すからな。しっかりやれよ。」
「はいっ!」
俺は負傷した先輩の替わりに正レギュラーとなった。
それというのも決勝戦で決め手のゴールを入れることができたから。
正レギュラーは勿論の事、準レギュラーの先輩たちも認めてくれた。山下以外は。
家に帰ってすぐ部屋に上がり着替えた後、机の奥に仕舞い込んだ物に手をかけた。
銀のイルカのネックレス。
「よし。」
俺はそれをそのままポケットに突っ込んで階段を駆け下りた。
「ちょっと、遼!ご飯は?」
「帰ってから食べる!」
ほんとはメチャクチャ腹が減っていたが、おちおち食事なんかしていられない。
はやる気持ちを自転車を漕ぐ足に託した。
いつか来たしおりの家。
そこにたどり着くまでドキドキしていたけど、
家が見えると余計に落ち着かなくなった。
そして呼び鈴を鳴らすのになぜか足が震える。
サッカーのどんな場面でも感じたことのないプレッシャーを今ここで感じていた。