陥落寸前!?俺様部長に愛されすぎています。
落としたペットボトルに入っている水が足に流れて来て、ハッとした。
たった数秒の時間が私には長く感じた。
「私ったら…ごめん…」
そう言って首に掛けていたタオルでペットボトルから流れた水を拭いた。
「ヒロくんったら急に冗談を言うからビックリしてペットボトルを落としちゃったじゃん!」
私はヒロくんにそう言った。
だってさっきまで愛し合っていたんだよ?
信じられる訳ないよ…。
冗談だよね?ヒロくん…。
「ごめん…冗談じゃないんだ」
嘘だって言ってよ…。
どうして突然?
「さっきまで愛し合っていて、別れようなんて言われて信じられる訳ないよ!
喧嘩だってしてないし理由がわかんない!」
するとヒロくんは私にトドメを刺す言葉を言った。
「俺…結婚する事になったんだ。
会社のお偉いさんの孫娘さんが俺を気に入ったみたいでデートしてやってくれって言われてデートしたんだけど…凄くいい子でさ、お酒を飲み過ぎちゃって…気づいたらホテルに居たんだ。
あんまり記憶にないんだけど目覚めたら二人共、裸だった。
それから会ってなかったんだけど2ヶ月が経ったある日、俺の前にその子が現れて妊娠したと言った。
だから結婚しなきゃいけなくなって…
俺と別れてくれ!
翼ならまだ若いし俺じゃなくても男は沢山、居るんだからいいだろ?」
妊娠?結婚?相手は私じゃなくて知らない何処かの孫娘?
私はそんな事もしらずにさっきもヒロくんに愛されてたんだよね?
何だか怒る気にもなれなかった。
怒るよりも悲しみのが強くて、まさかこんな形で私とヒロくんとの関係が終わってしまうとは想像すらしなかった。
「結局、男なんて裏切るんだね?
あの日、ヒロくんが居てくれたから私は立ち直れたけど、今回はあの時よりも酷いよ…」
「翼…」
「サヨナラ」
そう言った私は服を着替えて合鍵をテーブルに置いて何も言わずにヒロくんのマンションを出て行った。