まだ本当の恋を知らない
居酒屋へ着くと、まずはビールで乾杯する。

すかさず尋ねられる。

「で、涙の訳は?」

「……」

「あんな顔して俺の前に立ったら気になるじゃん。
振られたのかなって。」

「振られてません。」

上手く言葉に出来ず空きっ腹にビールをがぶ飲みする。

「女じゃねー位の飲みっぷりだな」

呆れられる始末。

いーのいーの、飲んでやるから!

なんだかいい気分になってくる。

「ぶちょー、あたしのことは……とりあえずいいんですー。
アキちゃんから聞きましたよー。

本気の恋愛したことないって。」

ぶはっと、吹き出す…

「誰から聞いたんだよ!」

「うふふ、ないしょー。
嘘、営業の高田さん。
蛍はって、色々教えてくれたらしいですよー。」

「あいつ…」

高田さんを思い浮かべて苦い顔をする部長。

その顔がなんだか可笑しくてつい笑ってしまう。

「酔っぱらい、笑うな。」

少し不機嫌そうにこちらを向き、ほっぺをきゅーとつねってくる。

そんな、いつもと違う部長から目が離せない。

酔っぱらいながらも、胸のドキドキが止まらない。

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