冴えない彼はメガネを外すとキス魔になります!
雨はすっかり止んで、西の空には赤く染まった空が浮かび上がった。
宿に戻り、濡れた体を暖めたのは温泉の湯でも、用意されたお茶でもなく亮介の腕だった。
本当は宿に着いてゆっくりするはずが、思いがけないアクシデントに不機嫌な顔をしながらも、着替えが終わってやっと落ち着いた私を亮介は立ったまま後ろから抱き離そうとしない。
水平線に沈む夕陽がバルコニーに佇む二人をゆっくり照らす。
言葉を交わす訳でもなく、お互いの呼吸だけを感じていた。
ゆっくり流れる時間。
「はぁ……俺、どうしよ」
ゆっくりと吐いた息が妙に色っぽい。
「ん?」
「幸せ過ぎて…もう死んじゃいそう」
新婚旅行なのに縁起でもない。もっと違う言い方あると思うんだけれど、そこが亮介。
どこかズレている。
ロマンチックに流れている時間を気の利いた言葉ひとつも出て来なくてもそれすら愛おしいと感じている。
少し後ろに傾け、亮介と視線を絡め、わざと不機嫌な顔をする。
「死んじゃいそうって…!もっとさ、言い方があるでしょ!」
シマッタ!と顔を強ばらせて本気で焦った顔がまた可愛い。
「例えだよ。例え!それくらい…今、すごく幸せってこと。誰にも邪魔されず、こうして夏希といられるってこと嬉しくて…あーーー、もう!」
焦りながら言い訳をして、自分の気持ちが伝わっていないと思っているのか、おもむろに頭をクシャクシャと掻き乱す。
体を預けたまま、その様子を背中で感じていた私に言葉足らずな亮介から「チッ」という舌打ちが聞こえた。
「言葉が足りないのなら、体で伝える」
すると亮介の唇がチュッ、チュッと音を立て、私のうなじを何度も刺激して来た。
「あっ…」