登山ガール
ぐ~。っと、私のお腹が鳴る。

「あっ。」

「俺も腹が減ったなぁ。とりあえず、下山して飯でもって食いに行くかな。」

赤面する私をよそに、田村さんはそんな事を呟いていた。

「田村さん、私コンビニでオニギリを買ったんですけど、良かったら一緒に食べませんか?」

リュックからオニギリを取り出し、田村さんに差し出す。

「いいんですか?ありがとうございます。それと、俺の事は雄介で良いですよ。俺と吉野さんは友達なんですから。」

「な、なら私のことも花菜って読んでください。」

「分かったよ。このオニギリ、ありがたく頂こう花菜w。」

「ちょっと、雄介君。それは酷いんじゃないかな。」

人の名前で遊ぶなんて。

「ほら、花菜ちゃんだって言ってるじゃん。」

「私はいいの。自分の名前だから。」

はぁ。何やってんだろ私。でも、雄介君と打ち解けられてるかな。私、雄介君と気が合ってるのかもしれない。

異性とこんなに楽しく話したのはいつぶりだろう。

そのあと、山頂でいろんな話をした。ほとんどは先輩の話だったけど。

先輩、先輩のやらかしてきたことは全く滑りませんでした。
ありがとう、先輩。


「俺はそろそろ下りるけど、花菜ちゃんはどうする?」

「私も下ります。一緒に付いていってもいいですか?」

せっかく、友達に(彼氏になるかもしれない人に)なれたんだから、もっと一緒にいたい。

「じゃあ、一緒に下りようか。」

「はい。」

こうして、2人仲良く下山することになりましたw。

「それで、花菜ちゃんは初狩駅に行くの?それとも笹子?」

「初狩駅です。友達と待ち合わせしてるので。」

「そっか。って事は花菜ちゃんも笹子駅から滝子山に登ったんだね。」

「はい。雄介さんもなんですか。」

「そうだよ。なんか運命を感じるね。いや、ただの偶然かな?」

ハハハ。と、雄介さんが笑う。
運命。もしかしたら、祠で願ったのが叶ったのかな?それとめ神様が私にくれる最高のご褒美?

悶々としながら下っていると、

←男坂
→女坂

という表札が目の前に現れた。

「じゃあ、花菜ちゃん。合流地点で待ってるから、ゆっくりと下ってくるんだよ。」

そう言い、雄介さんは男坂の方へと足を進める。

「待ってください。私も一緒に行きます。いや、行かせて下さい。」

もしかしたら、もう会えないかもしれない。こんな所で終わりにしたくない。
< 11 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop