登山ガール
うぅ、ヘビよりも気にしちゃうよ~。

また紅く染めながら、手を取り歩き始める。








「なんか明らかに人の手で作られたような道に出ましたね。出口が近いのかな?」

「多分ね。ほら、あそこが登山道の入り口だよ。」

登山道という表札の向かいに、熊注意の看板がたてられていた。

く、熊がでるのこの山。

出会わなくてよかった~。ある日、森の中、くまさんに出会ったら死んじゃうよ。

「お疲れ様。花菜ちゃんはお友達と帰るんだよね?」

「はい。」

きっと駅で首を長くして待っているはずだ。

「なら俺は先に行くね。女の子同士のところに男の俺が入るわけには行かないから。」

「分かりました。今日は本当にありがとうございました。」

今日何度目か分からないお礼を言う。

雄介さんがいなかったら、怪我だらけでまだここにはいなかったと思う。

「雄介さん、もしよかったら私とlineの交換をしませんか?」

勇気をもって、声をかけた。

「うん。けど、俺はまだガラケーだから、トークしか出来ないよ。それでもいいかな?」

「はい。お願いします。」

トークだけでも繋がれる。メアドや携帯番号を訊く勇気はないけど。

「俺のIDは“11923526”だよ。あとでメッセを飛ばしてね。ちゃんと登録しておくから。じゃぁ、また今度デートしよう。」

そう言って、雄介さんは走り去っていった。

元気だなぁ。私の方が若いのに。







「花菜ちゃん、お疲れ様。どうだった?」

「遅い。人をどんだけ待たせんのよ。」

初狩駅に着いた私に由美ちゃんは労い、先輩はクレームをつけた。

「いい息抜きになったよ。ありがとう由美ちゃん。あと、先輩には文句を言われたくないです。」

先輩の文句を聞き流し、電車にのり自宅を目指す。



line

花菜です。今日は本当にありがとうございました。

雄介(ユウ君)
こちらこそ。楽しかったです。今度は、軽い山に登りましょう。(一緒に。)


是非。楽しみにしてます。

雄介(ユウ君)
ならそういうことで。ではでは~。





雄介さんのlineネームはユウ君って言うんだぁ。
ふふ、デート楽しみだなぁ。

電車に揺られながら、そんな事を思い、睡魔との戦いに敗れ、夢の中へと旅立つのだった。
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