登山ガール
「藤沢がいいです。雄介さんが立河原の方がいいならそちらでも構いません。出来れば一緒に下りたいです。」

やっぱり1人だと寂しいし、怖い。
人がいると安心する。

「わかった。それじゃ、一緒に藤沢の方に行こうか。」

「はい。」

しばらく行くと、水の音が耳に届いた。

何だろう。こういった場所で聞く水の音ってなんか癒される気がする。

「水辺は滑りやすいから注意しながらゆっくりとね。」

雄介さんは私の前を歩きながら、いろいろと注意をしてくれている。

「花菜ちゃん、ここの石を渡って向こう側に行くよ。」

そう言って、雄介さんは地から石へとジャンプした。

「えいっ。きゃっ!」

石の上に足をついた時にツルッと滑り、背中から沢にころんだ。

深さは5cmぐらいしかないが、下には石だらけなのだが、痛みがまるでない。

目をあけると、雄介さんが私の下になってずぶ濡れになっていた。

「大丈夫?怪我はない?」

雄介さんが私を気遣う。

「私は大丈夫です。それより雄介さんは?怪我してないですか?どこか痛いところはないですか?」

「大丈夫大丈夫。水に入ったおかげで、火照った体も冷えて、元気になったぐらいだよ。」

腕をグルグルとまわしてみせる。

よかった~。本当によかった。

「雄介さん、私をかばったりしないで下さい。もっと自分を大切にしないと駄目ですよ。それと、助けてくれてありがとう。」

「どういたしまして。それと、また同じようなことがあったらまた同じ事をするよ。好きな人を守れなくては男が廃るからね。」

す、好きな人!そ、それって私のこと?私のことだよね。

「じゃあ行こうか。」

雄介さんが私に手を差し出す。

「はい。」

私はその手をとり、ゆっくりと足を進めると同時に、雄介さんの手の温もりを感じていた。

ふと、雄介さんの足が止まり、私も同時に止まる。

「どうしたんですか?」

「ほら、前にベビがいるから止まったんだよ。

「きゃっ!」

私は雄介さんに抱き付く。

「ごめんなさい。私、ヘビは苦手で少しこのままでいさせて下さい。」

私が雄介さんに抱き付いている間に、ヘビは山の奥へと消えていった。

「すみません。ありがとうございます。」

私は雄介さんに頭をさげる。

「気にしない気にしない。むしろ役得だから。抱きつかれて俺は嬉しいから、気にしない気にしない。」
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