嘘や偽りの中で
「隼人、バケツの水汲んで来てよ。」
美奈の手元の花火に火を点けてあげながらそう言った太一に
「しゃーねぇな。」
バケツを手に取り、キョロキョロと見回した隼人。
「亜樹ちゃん、水道どこ?」
地元じゃない隼人じゃ場所がわからないんだろう、隼人は私にそう尋ねる。
しかも亜樹ちゃんって…。
何かいきなり名前呼ばれるなんて不意打ち。
さっきよりも更にドキッとした。
「私、行ってくるよ。」
バケツを受け取ろうと差し出した私の手を隼人は自分の手で受ける。
…えっ?
「一緒に行こ。」
歩き出す隼人に手を繋がれたまま、私も歩き出した。
「で?」
「うん?」
隼人の“で?”の意味がわからない私が聞き返すと
「水道。」
「あっ、だよね。あっち。」
私は少し先にあるトイレと隣接した水道の方向を指差した。
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