ゾンビバスター~4人の戦士たち~
 その和己の視線が、動いた。
 間近で見るまで気が付かなかったが、明美の頬にまつげが1本ついていたのだ。
 そんなものが一度目に入ってしまうと、気になって気になって仕方ない和己は、親切心からそのまつげを取ってやろうとして明美の頬に手を近づける。

「な、なにっ」

 和己の手が頬に触れる瞬間、条件反射のように明美が身を引く。

 まつげがついてる。

 そういえないのがもどかしかったが、仕方がないので明美が逃げないようにその顎を片手で掴み、

「~~~~~~~~‼」

 声もなく、慌ててもがく明美の頬に付いたまつげを払ってやった。
 和己はただ、親切でやったこと。

 しかしされたほうの明美はなにをされたのかいまいち分からずに、顔を真っ赤にしながら和己を思いっきり突き飛ばした。和己の体が布団の上に逆戻りする。
 び、びっくりした! キス、されるのかと思った……‼
 くそ! なんで私がこんな男に、翻弄されなきゃいけないんだ!
 突き飛ばされた和己はなんでもないように、無表情のまま起き上がっている。
 そんな和己に腹を立てた明美は、こうなったらなにが何でもしゃべらせてやる。強い信念を持って和己に挑む。

「なんかいえ!」

「………」

 相変わらずのポーカーフェイス。
 くそー。
 こいつ、絶対しゃべらない気だ。

「うぅん……明美ちゃん朝からなに大声出してるの~?」

「ふぉぁ~ぁ。今朝は明美の声が目覚ましか」

 ひとみも、聖も明美の声の大きさに、起きてしまったようだ。
 皆が起きてしまえば、こいつがしゃべる確率はますます下がる。
 つい力んで大声を上げてしまった。残念だが、ここは一度身を引くしかない。
 確かに聞いた、和己の声。
 寝起きで少しかすれてはいたけど、どこかで聞いたことがあるような……声だった。
 前に話したことある? いや、そんな事ないはず。
 本当は口が聞けるのに、話をしないのはどうして?
 二人きりになるチャンスを見つけて問いただしてやる。
 にしてもだよ、女の顔に堂々と触るなんてあいつ、やっぱエロいよ‼
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