イジワル上司と秘密恋愛

***

——温かい。気持ちイイ。くすぐったい。

いい匂い。甘い。ああ、でも……痛い。



「…………頭痛い……」

ギリギリと締め付けられるような頭痛で眠りから覚めた。無意識に額を押さえ、眉間に目いっぱいの皺を寄せて苦痛に顔を歪める。

頭だけじゃない。なんだかお腹も痛いし身体がだるい。

あまりに快適とは言い難い目覚めに、もう一度このまま眠り直してしまおうかと思ったけれど……ふと鼻先に掠ったムスクの香りに突然意識が覚醒した。

あんなに重たかった瞼を一気にこじ開け、気だるかった身体を勢い良く起こす。

消灯した暗い部屋。けれど、ベッドサイドで仄かな明かりを浮かべているテーブルライトが、私の目に信じられない現実を見せ付けた。


「……うそ……」


小さな寝息をたてる穏やかな寝顔。仄かなライトの明かりが閉じた瞳に睫毛の影を落とし、いつもより一層艶やかさを醸し出している。

剥き出しの首筋に初めて見る素肌の肩。細身に見えてわりと筋肉が着いていた。

いつもと全然違う雰囲気。眠っているだけなのに、まるで別人の雄々しさと妖しさ。

ああ、でも、間違いない。今、私の隣で無防備に眠っているこの人は——

——綾部さんだ。

 
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