イジワル上司と秘密恋愛
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——温かい。気持ちイイ。くすぐったい。
いい匂い。甘い。ああ、でも……痛い。
「…………頭痛い……」
ギリギリと締め付けられるような頭痛で眠りから覚めた。無意識に額を押さえ、眉間に目いっぱいの皺を寄せて苦痛に顔を歪める。
頭だけじゃない。なんだかお腹も痛いし身体がだるい。
あまりに快適とは言い難い目覚めに、もう一度このまま眠り直してしまおうかと思ったけれど……ふと鼻先に掠ったムスクの香りに突然意識が覚醒した。
あんなに重たかった瞼を一気にこじ開け、気だるかった身体を勢い良く起こす。
消灯した暗い部屋。けれど、ベッドサイドで仄かな明かりを浮かべているテーブルライトが、私の目に信じられない現実を見せ付けた。
「……うそ……」
小さな寝息をたてる穏やかな寝顔。仄かなライトの明かりが閉じた瞳に睫毛の影を落とし、いつもより一層艶やかさを醸し出している。
剥き出しの首筋に初めて見る素肌の肩。細身に見えてわりと筋肉が着いていた。
いつもと全然違う雰囲気。眠っているだけなのに、まるで別人の雄々しさと妖しさ。
ああ、でも、間違いない。今、私の隣で無防備に眠っているこの人は——
——綾部さんだ。