イジワル上司と秘密恋愛


綾部課長に“マリ”さんという恋人がいる事は、彼に憧れる女子社員の間では有名な話だった。

マーケティング企画に来る前の営業企画課にいた時から付き合っている彼女らしい。なんでも取引先の担当者だったとかで、かなりの美人だという噂まで届いている。

以前は駅や街などでその美人と一緒のところをよく目撃されたそうだ。最近はそういった目撃情報はないけれど、彼が同期の友人に『うちのマリがさぁ……』なんて楽しそうに話している場面には皆よく遭遇しているので、きっと彼女との恋仲は順調なのだろう。


“マリ”さんが羨ましい。綾部さんみたいな素敵な人とふたりきりでお酒が飲めて夜を過ごせるなんて。

そんな羨望を決して表に出すことなく、私は

「またまたぁ。課長は充分お若いですよ」

と、当たり障りのない笑みを向けた。


「おはようございまーす。お、志乃ちゃんは今日も早いなー」

軽快な挨拶を口にしながら、フロアにひとりの男性が入ってくる。

野崎(のざき)さん。私のチームのリーダーで四十過ぎの既婚者だ。言動がオジサンじみてるのが玉にキズだけど、とても面倒見が良く私の事も可愛がってくれている。

 
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