もう一度君を  この腕に
「酒井!」

後ろから肩を叩かれた。

「先輩。探してたんですよ。」

「俺が言った通りノンアルでも大丈夫だったろ?」

「はい。」

「ところで酒井、明日の日曜日空いてるよな?」

「特にこれといった用はないですけど。」

「じゃ、決まりな。」

「何ですか?」

「デートだよ。」

「デート?」

「俺が段取り組むから取り合えずあとで待ち合わせのメール見ろよ。」

「・・・・・」

僕はいきなりのことにどう答えていいかわからなかった。

デートって誰とだ?

まさか木村と?

「酒井、おまえさ、好きな子いるの?」

「い、いますけどちょっと訳ありで。」

「そんな奥手でどうすんだ?」

「でもですね。」

「とにかく明日は俺たちとダブルデートだからそのつもりで気を引き締めろ。」

「ダブル?あっ、先輩!」

先輩はその場に僕を残して帰ってしまった。

僕は急いで回りを見た。

木村がいない。

中庭に面したリビングのガラス戸の方へ目をやった。

木村は中で専務と何かしていた。

僕はそっちへ向かって歩いた。

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