もう一度君を  この腕に
「酒井さん。」

またしても呼び止められた。

今度は誰だ?

さっきのバーベキューの面々だった。

「ローストビーフはもう食べましたか?」

「いや、まだだけど。」

そういえば僕はまだ何も食べていなかった。

差し出されたローストビーフの皿を受け取った。

「ありがとう。」

僕の手にはぬるい缶ビールと冷めきったフランクフルトと

一番マシなローストビーフがあった。

取り合えずソースがかかって美味しそうなローストビーフを平らげた。

「他に何かお持ちしましょうか?」

急に腹が減ってきた。

「じゃ、悪いけどサンドイッチを頼んでもいいかな?」

4、5人が返事もせずに一斉に走り去った。

サンドイッチは大丈夫だろうか。

僕は木村と専務から目を離さないように

新しいノンアル缶を氷水が入ったボックスの中から持ち上げた。

木村は専務と何をしているんだろう。

プルトップを引きながら木村から目を離さなかった。

「酒井さん、どうぞ。」

ハムサンドが乗った皿を誰かに差し出された。

「ありがとう。」

僕は持ってきてくれた女子には顔も向けずに頬張って食べた。

ビールで喉に流し込んだらすかさず違う女子が皿を差し出した。

「良かったら玉子サンドもどうぞ。」

僕はお礼も言わずに手を伸ばした。

相変わらず木村はリビングから出て来ない。

どうしようかと考えながらビールをゴクゴク飲んだ。

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