もう一度君を  この腕に
ζ 確かめ合うまで
俺はLA支社へ転勤になり3年経った。

帰国の「き」の字も言われず

その後そのままスイスの親会社へ1年回された。

日本を離れて4年間仕事以外はたまに潜りに行くだけで

プライベートは他の社員たちのホームパーティや社のイベントに駆り出され

単独行動はないに等しかった。

そのせいもあって移動前愛莉に泣かれたことも

短いメールで彼女に別れを伝えたことも

俺にはすっかり過去のことになった。

4年経ち

何の前ぶれもなく小沼社長から帰国辞令が入った。

今度の夏は日本だ。

俺は安堵の息をもらした。

帰れる。

落ち着いた一人の時間が無性に欲しかった。

日本ならそれが叶う。

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