もう一度君を  この腕に
社内では二人が付き合っていることを知っているのはたぶん僕だけだ。

僕はそれ以来気持ちが沈み切っていた。

仲の良い川崎先輩にも僕の木村への特別な想いは話していなかったし

第一他人の彼女を横取りするなんて僕にはできないことだった。

ところが進藤先輩がLA支社へ転勤になり

悲しげな木村を毎日社内で見かけても声をかけづらかった。

入社したての頃は同期だったせいもあり

彼女とはよく声をかけ合っていた。

だが今は別の意味で余計に話せなかった。

進藤先輩がいない状況で僕が喜び勇んで

彼女に付け入るなんて真似は絶対できない。

僕は相当悩んでいた。

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