もう一度君を  この腕に
社長は日頃頑張っている社員に労いの言葉を続けた。

「今日はとことん食べて頂戴ね。」

そう言って自らドリンクを配って回った。

専務はコック担当だ。

プロ級の腕前は調理師のライセンスを保持している証だった。

僕はノンアルコールを選んでローストビーフの列に並んだ。

すると他部門の女子にわらわらと回りを取り囲まれた。

「酒井さん、ここは混むからバーベキューの方へ行きませんか?」

「いいけど。」

僕の返事に歓声が上がった。

「じゃ、私もご一緒させてもらうわ。」

「私も。」

とザッと見回したら5人はいた。

その中に木村はいなかった。

僕は川崎先輩を目で探した。

なんと先輩は木村と話していた。

先輩が彼女を紹介してくれるのだろうかと

僕は胸に期待を抱きながら

バーベキューのグループに連れ去られた。

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