FIRST KISS ~オムニバス~




「おはよ~。」
「や~ん、久しぶり?」
「え、そう?」

抱きついてくる友達の香莉菜。
カリナだから、リナ。
自分じゃ気に入ってないらしくて。
自分の、本当の名前が。

「好き?誰が?」
「知らないの~、楠木泰喜くん。」

頬杖を付くリナ。
ああ、また始まった恋バナ。
でも、楠木って……。

『それ、取って!』

朝の出来事。
そういえば来てない。
そろそろ始業式も始まるのに。

席が一つ開いてるから、あそこだろう。
見渡す限り、覚えてる人は少ない。
私には、色々あるから。

そういう、インパクトのない人は忘れる。
こういう体質だから上手く行かない。
生活だけじゃなく、精神的にも。
やっぱり、だめじゃん。
そう思ったり。

「ああ、知ってるかも。」
「珍しいねぇ?もしかして被った?」
「は?ないない。」

会ったばっかりだし。
恋愛対象なのかな、ああいうことするのって。
だって、スプレー=落書き。
ようは不良ってわけで。
好きになれるものじゃない。

「良かった。」

だから、そんな安堵されても……。

ふっと溜め息。




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