FIRST KISS ~オムニバス~
「おい楠木、あんな事言われてるけど?」
「うん」
トランプをしているグループで
唯一彼はボーっとそれを見ていた。
馴染めていないようで、彼は溶けていた。
崩れたような悲しい笑みを見せると
彼は座る体勢を直した。
「良いのかよ」
「はは、慣れてるからね」
「そんなようには見えねえよ」
「癖なんだ、こういう顔」
明るい楠木とは違った。
悲しそうな雰囲気は溶けなかった。
下がり眉を隠すように
彼は教室を出ようとする。
「何処行くんだよ」
「ちょっと、トイレ」
悲しみを表現するなんて
できる奴は少なかった。