思い出してはいけないこと(仮)加筆修正進行中
「これ、着るんだよね……?」
鞄の中から、先週買った水着をつまみ出す。
初めて着る”ビキニ”に少し戸惑いながらも、時計を見て急いで着替えた。
「うぅ」
その”水着”を着て鏡の前の自分と対面するが、どうも違和感しか感じない。
初めて着るのだし、違和感を感じて当然なのだけど。
淡いピンクの布地に白い水玉と白いレース、中心には水色の小さなリボン。
水着自体は可愛いんだけど。
うーん、と唸りながら、鏡の前で右往左往する。
するとガチャと、音を立てて後方にあるドアが開いた。
「優那、日焼け止め貸し____」
「へっ!?び、びっくりした……。ノックくらいしてよ、蒼空」
「ごめん。でも、その水着……凄い似合ってる。可愛い」
微笑む表情に、少しだけドキッとした。
「ありがとう?」
照れくさいけど、素直に嬉しい。
「それで、日焼け止め?」
数秒の沈黙の後、本題に入る。
「日焼けするとヒリヒリ痛くなるから」
「確かに痛いもんね。……はい」
日焼け止めを蒼空に渡すと、私はすぐにパーカーを手に取った。
流石にこのままは恥ずかしい。
「ん、ありがとう。優那はいいの?」
「私はもう塗ったから」
「なら良かった」
「おい、優那!髪ゴム貸せ。前髪が邪魔で___って、み、み、水着……胸!___くそっ、後でいい!」
パーカーを羽織っていると、今度は勢いよくドアが開いた。
けれど、すぐに閉じられた。
なんと荒い。
「髪ゴムならすぐに貸せたのに、行っちゃった」
「真、ああ見えてもシャイだから。優那の水着姿が可愛過ぎて直視できなかったんだよ」
「可愛くなんてないのに」
「可愛いよ、変わらず……ね」
あ、髪結ばなきゃ。
長いと肌にまとわりついて邪魔だし。
「俺が結んであげる」
「いいの?ありがとう」
高いところで結ぼうと思っていたけど、あれって自分でやるのには結構つらい。
腕が疲れる。
蒼空に髪ゴムを渡すと、ドレッサーの前に座った。
ふと鏡越しに見えるのは、蒼空の水着姿。
肌白い……それに、意外と筋肉は締まっている。
いつも寝てばかりで運動なんてしないイメージだけど、確か体育の時は誰よりも活躍してたのを覚えている。
蒼空の細長い指が髪の間をすり抜ける。
首元の髪を掬い上げると、指が首筋に当たってくすぐったい。
何より、人に触れられていることが、なんだかくすぐったい。
「はい、完成」
蒼空は、あっという間に私の髪を結った。
「ありがとう。蒼空は器用だね」
「優那の為だと思うとうまく出来る」
自分でやるよりもはるかに綺麗に結えている気がする。
『僕が縫ってあげる』
『ほら、元通り』
『ありがとう。___くんは器用だね』
『___の為だと思うとうまく出来る』
え?
何、今の。
勝手に頭の中にぼんやりとしたものが流れる。
曖昧で、所々欠けている。
だけど、確かに言える。
私は前にも同じ会話を誰かとした。
気のせい、かな。
「ん?どうしたの。」
「ううん、なんでもない。」