思い出してはいけないこと(仮)加筆修正進行中
「じゃあ、次は優那ちゃんと真だね」
「ほら、さっさと行くぞ」
「うん」
三人の見送りを背中に、真が持つ一本の懐中電灯の光を下に境内へと立ち入る。
少々罰当たりな気もしなくもないけれど、これでもちゃんと神様に挨拶にしに行くのだ。
「結構暗いな」
「そうだね」
何だか微妙な雰囲気。
特に弾んだ会話もなく、周りの木々から聞こえる虫の声が耳をくすぐる。
「っ………」
不意に風が吹く。
「何か変な音しないか?」
変な、音……?
急に嫌な事を言わないで欲しい。
「良く聞いてみろよ」
2人して鳥居が連なる途中で足を止めた。
耳を澄ませると、ザッ、ザッ、ザッ、と何か足音のようなものが聞こえた。
「足音……?」
「お前、怖くないのか?」
「怖い」
「全然怖そうに見えねぇけど……」
「怖いよ?」
「あー、はいはい。はぁ………ちょっとぐらい怖がる素振り見せてくれたって良いだろ。可愛気ねーな……ったく」
「それより、早く行こうよ。足音近くなってるから」
少しずつ、その音が大きくなっているのがわかる。
「そうだな。ま、どうせ夕が俺達をおどかそうとしてるんだろ」
夕ならありえそうだけど、この感じはなんだか違う気がした。
「……」
「……………あのさ、その手はなに」
その手とは、私が真の洋服の裾を掴んでいるこの手だろうか。
「暗いから逸れないように?」
懐中電灯を持っているのは真だし、急にいなくなられたら困る。
「……なら、こっちほうが安全だろ」
裾を掴んでいたはずの手を、大きな手が包み込む。
「うん……」
冷たい風とは反対に、2人の手はとても温かかった。