急に女扱いされても困る
「あっきらさああああぐっ」

日曜日。校内のあちこちから他の部活動の音が聞こえる中、それらをぶっ千切るような大声が校門の方から聞こえて来たかと思えば突然静かになった。何だったんだ今の。

「あ、うちの永谷がすみません煩くて。」

声の主だったらしい永谷の首根っこを掴んでそう謝罪してきたのは時雨坂のキャプテンである高坂さんだった。

「あはは…」
「アキラさんお久し振りっす。なんか久しぶりって感じしないっすけど。」

高坂さんに捕獲されたままへら、と笑いそう律儀に挨拶する永谷。そりゃあそうだろうよ、毎日メールのやり取りしてたからな。

「あ、そうだ。アップ終わったら俺と1on1してくださいよ。」

永谷はようやく解放された首もとを若干痛むのかさすりながら、そんなことを提案してきた。

「嫌だ。」
「うええっ!?な、何で!?」

どうやら断られるなんて露にも思っていなかったようで、ショックだと言わんばかりに顔を歪める。僕は当たり前だろうと言外に言いながら体育館の中へ。

「だって前回のあれはあくまでお前が練習に参加するようにするためのものであって、今回はやる必要ないだろ?ていうか大会は来週末だから今日はそれどころじゃないし。」

永谷はたぶん試合に出るんだろうし。まあ1年だからせいぜいベンチだろうけど。ちなみに僕は今のところ出る予定はない。
僕の言い分に言い返せないのか、ぐぬ、と唸る永谷。そうこうしているうちに集合がかけられたので小走りでゴール下へ行こうとするが、数歩進んだところで僕は溜め息を吐く。

「…ほら、行こう。練習終わった後赤神駅に集合、そこの駅前のとこに市民体育館あるから。」

手を引きながら早口でそう告げる。永谷は意味がわからないのか首を傾げたが、1on1したいんでしょ、と付け足せばはい!と目を輝かせた。嫌だとは言ったけどやらないとは言ってないのだ。
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