恋色キャンバス~君がおしえてくれた色~
少し休むために、人通りの少ないベンチに
座った。



「疲れたね、人、多かった」


「結構、人気のある祭りだから」



二人きりになると、
莉理華は少し思い詰めた顔で聞いてきた。



「要君は、嫌じゃないの?」



「何が?」



「義足だとか、言われてたから……」



うつ向きながら聞いてくる、莉理華に
要は。



「リリィにそういう顔されるのが、
一番辛い」


「えっ」


「俺は、リリィの元気な姿が好きだから、
俺の事で悲しい顔されるのが辛い」



莉理華は、驚いた表情を浮かべた後、
考えている様子だった。



「それに、対になる人は居るから。

優しい人も居れば、怒りぽい人も居る。
好みの人が居れば、無関心の人も居る。
勉強が得意な人も居れば、不得意な人も居る。

でも、それは、隠すことの無い、
その人の個性なんだよ」



莉理華は、要と顔を合わせた。



「それと同じで、
俺みたいに障害を抱えた人も居る。
健常者といわれる人がいる。

これも個性だ」



要は、遠い目をしながら、話し出した。



「この七十数億人いる世界で
同じ人ばかりじゃつまらない。

色んな人が居て、考え方もあって、
感じ方も違う、個々の経験がある。

相手とのズレがあったりする。
自分には無い感覚が思いが生まれる。

そんな素敵なことが俺にとって、
嬉しいし、楽しいんだ」



要は、莉理華の目を見ながら話した。



「最初は辛くても、自分のペースで歩いて
行ければいい。

馬鹿にする奴も居るかもしれないけど、
必ず側で親身になってくれる人も居る。

自分の良いように考えれば良いんだよ。

まぁ、礼儀とかモラルとか一般常識とかは
守る必要はあるけど

人に迷惑かけないくらいのことなら、
許されるでしょ」


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