最期
もしかしたら、姉には見せない顔を、俺らには見せてくれたかもしれない。


今となってはそれも、確かめようがないけれど……


姉が父を嫌いなのは、態度を見ていればわかる。


女として母として娘として、姉は母に共感したんだろう。


家族を蔑ろにしている、ひどい父親。


そんな風に見ていたのかもしれない。


けれど、俺らは男で、まだ夫にも父親にもなっていないから、偉そうなことは言えないけれど……


外で働くことが、どんなに辛くて大変なのか、自分が社会人になってみてよくわかった。


幼い頃は、姉と一緒になって父を非難していたかもしれない。


でも今は、家族を養いながら必死に働いていた父を尊敬していた。


家庭を顧みなくたって、俺らがきちんと食べることができて、着る物にも住む所にも困らなかったのは、父が一生懸命働いてくれたおかげだ。


それを姉に分かれっていうのは無理なのかもしれない。


同じ立場にならなければ、わからないのは仕方のないことだ。
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