阿漕荘の2人
練無side


その日は降水確率20パーセントの日だった




しかし、小鳥遊 練無は
幽霊の次に天気予報を当てにしない性格であるせいか


または
見かけによらず、比較的几帳面で
規則正しい真面目な性格であるためか


この日、彼は傘を持って大学に行った



6時限目を終えて
練無が駅のホームで電車を待つ頃には雨が降り出し
誇らしい気持ちになった



時刻は夜の8時頃


もう外は真っ暗だった


雨のせいか、阿漕荘までの道は人通りが少ない



地面に水溜りが張っていたが

彼はスニーカーで水を切りすすむ


練無が阿漕荘の2階に続く階段を上って

いくと、

誰かがうずくまっている



練無はそれに気づくと


急いで残りの階段を上り


その人物に近づく


月光が2人を照らし、練無は


それが誰だか初めて気づく










「しこさん?」





彼女は振り向く




しかし返事は無い





彼女は見上げる



そして、彼を見る




練無は傘を閉じて

手すりに立てかける




練無は彼女に近づき



その背中に手を回す




「しこさん、大丈夫?



どうして泣いてるの?」





しかし、彼女は答えない




目を閉じ、彼に身体を預け


泣いている



練無は彼女の後ろの箱に気づく




練無は少し膝を上げ



その中身を覗く





「…………タルト?」








「ルピアのタルトは…………




朝から並ばんと







買えへんのになあ…………





アイツは馬鹿者や……………」




練無はじっと彼女を見る



練無の目が彼女を見せる




その美しい瞳は





自分ではない何かを見ていた



自分の知らない






何処か遠くを見ていた








その日の雨は


誰かが誰かを傷つける




そんな悲しい雨だった
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