阿漕荘の2人

November November 2

紫子side

11月の終わり

紫子は紺色の男モノのペンチコートに
薄手のセーター、ジーンズを着てビート
ルの助手席に乗っていた


空は澄んだ青空

12月を間近に控え、少々肌寒い日だった



「ああ、あかん、あかん

なして、うちはこんなことになってるんやろ

ああ、ああ、そうかそうか。

ほう…………。

ほう…………。

まあ、なんでもええけどね。

君の信頼もここまでやな。

もう友情もへったくれもあるかいな。

ようよう、こんな目に遭わせてくれたんやな。

うちの人生もここまでや

まさに、悲劇のヒロインやで」


「えっ?喜劇のヒロイン?」


運転席の練無は横を振り向く


紫子は腕をあげ、天に仰ぐ


それは、神に助けを求めるポーズだとかなんとか………


「うちはな、ようわかったで


君、アレやろ。


ついにな、自分の人生に疲れ果ててな

心中しようってな思ったんやろ、あーん?

そやけど、1人じゃ寂しいからって

うちの事、巻き添いにしたんやろ、あーん、ちゃうかいな?


無免許のくせに、盗んだ車をガードレールに

ぶつける気やろ、

尾崎 豊やって免許あったで!

うちはさながら、マリリン モンローやなかいな

はぁー、なしてこんな酷い目に………

なんでやの?


言っちゃなんだか、君アレよ。


そんな可愛いくて、小さくて
難関大医学部やで


将来、医者やで


少林寺もプロ級やで

なにがそんなに不満なん、あーん?


メンチ切るで、ホンマ。え?

見境ないヤツやな、ほんまにな」


車は高速を抜けて、一般道にはいる

ビートルは小さくて、小回りが利くため

一般道は走りやすいと練無は思う


「………僕は免許持ってるし、

それに、この車は借りたの!友達に!!


それに、


ガードレールに車がぶつかって

不慮の事故で亡くなったのは


マリリン モンローじゃなくて

イギリスのダイアナ妃だからね!!」


「あれ??アガサ クリスティちゃうの?」


「アガサ クリスティは

車ごと湖に入って亡くなったの!!


もぅ、そんなに僕の運転が恐いの?


傷つくなーー」


「恐いなんてもんやないで!

気分はさながらジャグリングしながら自転車乗るサルやサル!」


「バルサミコス?」


「あぁもー、なしてついてきたんやろ……………」


今日は何故かれんちゃんが

ネズミの国だか馬の国だかしらんが

どうも、サファリパークの

タダ券を手にしたらしい


タダと聞いて、練無の後をついて来たらこのざまだ




「サファリパークじゃないよ

何度も言うけどさ


ウエスタンパークだよ、富士の」


「ウエスタンソース?

ブルドックソースの派閥かいな?」


「パークだよ
P A R Kだよ!」


練無は真っ直ぐに前をみながら答える





れんちゃんが

免許持ってたんなんて知らへんかったわ


うちに黙って?


いつ取ったんやろーか






「けど、なんでやん?

遊びに行きたかったん?」


「だってタダだよ

使わなきゃ、ソンじゃん!!

ソソンガソン!」


「それ、貰ったの?

友達に?」


練無は長い坂を登る


ウエスタンパークは山上にあるため


ここからずっと一本道だ



「………………………そうだよ」



なんか………



怪しいなぁ……………




恐喝したんやないやろか?



少林寺やしなぁ…………


足蹴りでもしたんやろ



しかしまぁ
恐喝してまで行きたかったんやろか?




うーん


「なんか………変なこと考えてるでしょ」


「どうして、行きたかったん?」



「……………」



「なんで黙っとん?なんか裏があんの?

もしや………………あぁ……………

うち、もしやこのまま、

港に連れ去れて

猿ぐつわにされ


知らない外国船に乗せられて………」


「知らない外国で覆面レスラーにでもなる?」


「そうや、そうや

そんで、チャンピオンベルトかじったろ

…………ってあのな!!!


うちのコト、そんなんに思っとたんか!!


きぃーーー!」


「結構、いい就職先だと思うけどなー

あとは、レスリングもいいね」


「うちはなんなん?

そこまで
格闘技に向いてるん?やって欲しい?」


「やって欲しいなぁ〜

僕、そしたら、ファン第1号になるもん♪
出場するなら何級かな?

重量級?メガトン級?」


「それ、何が違うのや!!


くぅーあー怒ったで!!


あとでこのビートルのタイヤに穴開けたるで!!」

「…………そしたら、しこさんも

帰れないじゃん」

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