阿漕荘の2人

November November 4

紫子side

なんなんだろうと紫子は考える


どうも、先ほどのカフェテラスで
食事をした時から


彼女の心はもやついていた



2人が食事をした後、


次に向かった乗りものは

ゴーカートだった

2人でスピードを競いあい

負けた方がポップコーンを奢るという

賭けをした


もともと、紫子自身が賭け事やギャンブルが好きな性格であるため


もちろん、勝ち気で練無に挑んだが

結果は惨敗だった


「しこさん?

大丈夫?酔ったのかな?」


紫子が浮かれない顔をしていたため

練無が心配した



「あーちゃうんや、大丈夫や

負けたの悔しくてなー」



彼女の言葉に嘘は無かった

嘘は無いが…………どうも何かが悪い



「やっぱり、食後のゴーカートはハード

だったんだよ

ポップコーンはやめてベンチで休もう」

「そんな…………

コレは勝負やし、約束は守らなー」


「いいから、ほら行くよ」


練無は紫子の腕を強引に掴んで

ベンチのある休憩所まで歩いた


紫子は、先ほどまで外していた練無の

ブラックの手袋を取り出した


彼女はその手袋をはめるのを

何故か戸惑ったことに

不思議に思った


「しこさんは此処に座ってて

僕、暖かい飲み物買ってくるから」

練無はそう、紫子に告げて

売店を探しに行った

紫子は1人、誰も居ない休憩所で

考えていた




おかしい。


先ほどまで、あれだけ元気だったじゃないか


体調が悪いのだろうか?


それすら分からない


単なる食あたりかも…………



昼間っから、ビールなんて飲むからだ




うん、きっとそうだ



れんちゃんに悪いことをしてしまった



自分が負けたのに…………


手元を見た


ブラックの手袋



コレはきっと男モノなのだろう



れんちゃんだってそれぐらい持ってる



当たり前じゃないか、



彼は男の子だ




そう、男の子だ……



今、自分は男の子と遊園地に来てる




うん、そうだ……



周りはなんて思うのだろうか………



やっぱり、デートだと思うだろうか……




いいや、違う、
コレはデートじゃない




うちとれんちゃんは友達だ………



分かってる、そんなこと




なんだろう、



なんでモヤモヤするんだろう?




脚が宙に浮いているようだ



秋の風が木枯らしを為す




風が冷たい




あの夜を思い出す




海を見ながら2人で飲んだ




あれは、9月だった



まだ、2ヶ月しか経っていない





長い2ヶ月間だった………





今まで、自分が経験したなかで




きっと、一番長い2ヶ月だ



落ち葉は踊る



黄色い風船を持った子供たちが



地面を駆け巡る




恋人たちが手を繋ぐ




季節はもうすぐ冬になる




長い時間がまた過ぎる




自分は…………




自分は……………








「しこさん、どうしたの?」






彼がそう尋ねた



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